小学生のとき以降、友達の間でよくこんなことを聞き合いました。
"夏と冬、どっちが好き?"
私から聞いたこともあれば、友達から聞かれたこともあります。
大人になってからも、「四季の中で一番好きな季節は?」のバリエーションとして、このやり取りをしました。
四季の中では、"春" と "秋" が好きな人が多くて面白みに欠けることから、暑さと寒さのどっちが好きという意味が込められていたように思います。
私はいつも「冬が好き」と答えていました。
冬の朝のしんしんと冷え切った静かな空気感が好きでした。布団の中で起きようかどうしようか迷いつつも、布団をガバッとはねのけたときの身が引き締まるような寒さが好きでした。
人通りのない冬の商店街に落ち葉が舞うような静寂感が好きでした。
けれど、いつ頃からか、冬より夏の方が好きになっていることに気づきました。たぶん、40歳代後半になった頃かと思います。
ギラギラと輝く太陽、飛び散る汗、かき氷をかき込んでキーンと痛む額・・・。何もかもが活動的になって、薄着で闊歩し、今がこの世の春とばかりに盛夏を楽しむことのできる傲慢さや無遠慮な華やかさに羨ましさを感じるようになったのです。
夏があまり好きではなかったのは、夏に潜む若さに対して同世代として嫌悪感を感じていたのかも知れません。
年を取り、夏という季節が二度と取り戻すことの出来ない謳歌すべき特権であったことを知り、喪失感とともに憧れを感じるのだと思います。
でも、今、"夏と冬、どっちが好き?" と聞かれたら、そんな思いを気取られないよう「冬が好き」と答えます、きっと。
人は複雑なものです。